「足りない活字のためのことば」展

―不完全であること、不自由であることを前提にはじまった表現者たちの取り組み―

本展のために書き下ろされた詩・俳句・短歌の活版印刷シート(限定30部)と、各作品の挿絵として制作された版画を、ネットギャラリーで販売いたします。

※本展は、馬喰町ART+EATにて2013年10月1日(火)〜11月2日(土)に開催されました。

「足りない活字のためのことば」展 住田巡回展

  • ◎会期:2014年6月8日(土)、9日(日)、13日(金)、14日(土)、15日(日)、16日(月)、20日(金)、21日(土)、22日(日)、23日(月)
    10:00〜15:00
  • ◎住田町世田米「泉田家弐番蔵」二階
  •  岩手県気仙郡住田町 世田米駅78
  • ◎お問い合わせ先:住田町教育委員会 村上さん(0192-46-3863)

概 要

KAMAISHI LETTER PRESSについて

「足りない活字のための
ことば」展概要

ここに、活版印刷のための活字がひと組みあります。でも、数は揃っていません。揃っていないどころか、ほとんどないに等しいかもしれません。 この活字は、かつては岩手県釜石市の印刷会社、「藤澤印刷所」社屋3階の活字棚に整然と並んでいました。 けれども、2011年3月11日の東日本大震災で無残に床にばらまかれ、その後、社屋の2階まで及んだ津波によって、社屋そのものも壊滅的な被害を被ったのです。

10ヵ月後、瓦礫処理のボランティアが現場に入り、これらの活字は廃棄されようとしていました。 しかし、たまたまボランティアに入っていた坂井聖美(博報堂プロダクツ)はこの味わいある活字を全て処分するのは忍びないと考え、藤澤印刷所の厚意で一部を譲り受けました。 (同社は現在場所を移し、外注先の協力を得つつ、再建を図っているところです。)

足りない文字だらけのこのひと組の活字は、縁あって銅版画家の溝上幾久子の手に委ねられることになりました。 溝上は、ADANA8×5という簡易印刷機を購入し、これらの活字を使って小さな作品を作り始めました。 その古い活字は、現在のものとは微妙に異なる書体であったり、もう新たに作られることのないであろう木製の活字であったり、微細な欠けや傷にも何ともいえない味がありました。 活字を表現するための紙を探す過程で、西谷浩太郎(平和紙業)の協力を得、さらに長野県篠ノ井で活動するグラフィックデザイナー・宮下明日美も加わってKAMAISHI LETTERPRESS(カマイシレタープレス)というプロジェクトが立ち上がりました。

何かの巡り合わせで生き残り、ひとの手から手へ託されたこの活字のために展覧会ができないか、そしてそれを通じて今も復興に向けて歩み続ける港町・釜石に思いをはせる人が増えれば…… そんな思いを抱えてKAMAISHI LETTERPRESSのメンバーが馬喰町ART+EAT(バクロチョウアートイート)を訪ねたのは、2013年春のことです。 不完全であること、不自由であること、それを前提に何かがはじまるのであれば、どこかでだれかの役に立つかもしれない、そういう展覧会です。 馬喰町ART+EAT主催の武 眞理子をクリエイティブディレクターに迎え、プロジェクトは大きな転換点を迎えました。 武の発案で、日頃「ことば」を表現手段としておられるみなさまに、「この足りない活字のために、詩、あるいは俳句、あるいは短歌を作っていただけないでしょうか?」という呼びかけを行うことになったのです。 不完全であること、不自由であること、それを前提に何かがはじまるのであれば、どこかでだれかの役に立つかもしれない、そんな「足りない活字のためのことば」展にどうぞ力をかしてください。 この呼びかけに応え、むずかしい取り組みに挑戦してくださったのが、前出の12人の作家です。 さらに、「ことば」の作品に寄り添う「え」を制作するために、溝上幾久子キュレーションによる6組のアーティスト(釜石巡回展から松田圭一郎が加わり7組に)が参加することになりました。

次に、作家のみなさまにお渡しした、「この活字で組み版をし、ADANA8×5で印刷するためのさまざまな制約」をそのまま付します。

■文字の制約
1)ひらがな2号(22ポイント/32級)の活字が、下記のとおりに揃っています。ですからどうぞ、ひらがなをベースとして使ってください。 実物で印字した表もご覧下さい(資料①)ただ、字によって数が異なります。 下の表は、例えば1度の組版で、「あ」は6つまで使うことが出来、「ぽ」は1つしか使えないということを意味しています。また、促音、拗音のためのちいさい活字はありません。

あ/6個 い/10個 う/8個 え/4個 お/5個 か/5個 き/5個 く/5個 け/6個 こ/4個 さ/6個 し/10個 す/9個 せ/6個 そ/4個 た/10個 ち/4個 つ/6個 て/9個 と/10個 な/9個 に/ 9個 ぬ/2個 ね/2個 の/9個 は/10個 ひ/2個 ふ/3個 へ/3個 ほ/2個 ま/10個 み/6個 む/3個 め/4個 も/6個 や/4個 ゆ/2個 よ/6個 ら/5個 り/6個 る/10個 れ/3個 ろ/5個 わ/5個 ゐ/1個 ゑ/1個 を/9個 ん/6個 ぱ/2個 ぴ/1個 ぷ/1個 ぺ/1個 ぽ/1個 が/6個 ぎ/ 2個 ぐ/2個 げ/4個 ご/1個 ざ/2個 じ/2個 ず/4個 ぜ/2個 ぞ/1個 だ/3個 ぢ/2個 づ/2個 で/5個 ど/4個 ば/2個 び/4個  ぶ/2個 べ/2個 ぼ/2個

2)ひらがな3号(16ポイント/24級)、漢字4号(14ポイント/20級)の活字も少しあります。 実物で印字した表もご覧下さい(資料②) これらをひらがな2号と組み合わせて使うこともできますが、その場合は、 文字の大きさが不揃いになります。

■文字数の制約
今回使用する活版印刷機ADANAは、再現可能な文字数、行数に限りがあります。 もともとA6横のポストカードサイズを想定した印刷機ですが、これをA6縦として組んで左右に印刷すれば、A5横サイズでの印字が可能です。
A6横の場合 12文字×16行が最大A6縦×2面の場合 16文字×22行が最大 となります。

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KAMAISHI LETTERPRESS
について

岩手県・釜石からやってきた活字で作品制作・展示企画を行う活字ユニット。 3.11の津波で被災した釜石市の「藤澤印刷所」にたまたまボランティアで入ったメンバーの坂井が活字を同社から譲り受け、その不揃いだけど味わい深い、古い活字に心ひかれた溝上が小さな作品を制作しはじめることから活動がスタートした。

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KAMAISHI LETTERPRESS
メンバー

銅版画家/溝上幾久子
千葉県生まれ。森野真弓氏に師事。銅版画のスタンダードな技法を守りつつ、版表現の可能性を模索する。東京国際ミニプリントトリエンナーレ、カダケス国際版画展等、国際コンペに出品。 現在は、連作による物語性を意識した作品づくりをしているため、毎回テーマを持った個展を中心とした創作活動をしている。2009年「はちみつどろぼう」(馬喰町ART+EAT)他個展多数。 また、新聞や文芸誌、女性誌、書籍等の挿画、装画等でも活躍。 「足りない活字のためのことば」展では、KAMAISHI LETTERPRESSのメンバーとして全作品とペーパープロダクトの活字組版、簡易活版印刷機ADANAによる印刷を手掛け、印字された文字と紙からなる美しい平面を成立させている。 挿絵のアーティストのキュレーションも担当した。

デザイナー/宮下 明日美
京都造形芸術大学大学院・芸術研究科修了。さまざまなプロジェクトのマネジメントに携わる傍ら、“本・文字・言葉”をテーマに書籍や紙もののデザイン、作品制作を行う。 直近では長野県・篠ノ井を拠点に、まち全体を学びの場とする連続プログラム「しののい まちの教室」の企画として活躍。今回はDMデザイン、ペーパープロダクト企画を行う。

ペーパーディレクター/西谷 浩太郎
平和紙業株式会社所属。「紙コンサル」として多数のデザイナーから頼られる存在で、印刷加工会社と連携したものづくりの提案も行う。 同社「ペーパーボイス」での展示会や、加工会社が主役のイベント「カコウイチ」を企画。紙・加工業界を面白くする仕掛けづくりに励む。 今回は用紙選定をはじめ、協賛社である有限会社篠原紙工とのタッグで実験的なペーパープロダクト製作を実現。

プロデューサー/坂井聖美
製紙メーカーの東北地方担当営業を経て、株式会社博報堂プロダクツ所属。 異なる地域・人の交流を創出する活動を岩手・長野・東京など各地で展開。直近では長野市善光寺のシェアオフィスKANEMATSUにおいて、「クリエイターのための法律セミナー」「会計セミナー」を企画・実施。 今回は企画全体のハブとして、釜石および関係各所との連携・制作進行を担当。

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三陸・釜石の印刷工場で、東日本大震災を生きのびたわずかな活字。
人の手から手へと託されたその「足りない活字」のために、12人の作家が「ことば」を紡ぎました。
足りない活字で印字できる「ことば」だけで構築した詩、あるいは短歌、あるいは俳句が全部で12生まれたのです。 そのうちのいくつかには、国内外の7組のアーティストが挿絵(版画)を制作しました。

また、12の作品は、KAMAISHI LETTERPLESS の溝上幾久子がひとつひとつ手作業で組版し、手動の簡易活版印刷機で限定30部を印刷。最後に作家のみなさまの手で各部に自筆サインを入れていただきました。
販売作品は、いずれも手から手へとリレーされ、1枚、1枚ていねいに仕上げられた貴重なシートのうちのひとつです。

なお、本企画の売り上げの10%は、釜石社会福祉協議会・生活ご安心センター(旧ボランティアセンター)との協議の上、釜石地区の災害記録集作成費の一部として活用させていただきます。 同団体は震災直後から釜石で息の長い活動を継続し、現在もなおガレキ撤去、引越支援、仮設住宅運営支援など幅広い活動を行っています。

【出品作家】 五十音順

※作家名にタッチ、またはカーソルを合わせるとプロフィールがご覧頂けます。

「ことば」

  • 今福龍太
  • OKI
  • 乙益由美子
  • 姜信子
  • 國峰照子
  • 管啓次郎
  • 谷川俊太郎
  • 多和田葉子
  • ドリアン助川
  • ぱく きょんみ
  • 穂村 弘
  • 枡野浩一

「え」

  • 今津杏子とDamon Kowarsky
  • 富田惠子
  • 早川純子
  • 廣瀬理沙
  • 松田圭一郎
  • 松林 誠
  • 溝上幾久子

オンラインギャラリーショップで作品を見る

追 記

本展は、「1冊の本のような展覧会」というコンセプトのもとに準備をすすめ、展開してまいりました。 これを受けてサウダージブックス様より書籍化のお話をいただき、ただいま編集作業を進めております。 本年度中には発行する予定ですので、併せてご支援、ご協力のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。

「足りない活字のためのことば」展
クリエイティブディレクター
馬喰町ART+EAT主宰  武 眞理子