馬喰町ART+EATのランチのレシピを作っている料理研究家・小川美穂が綴る「世界の食をめぐる」楽しいエッセー。実際に滞在したアフリカや中近東の国々のおいしい家庭料理の作り方や、「食」をキーワードにして観たそれぞれのお国柄、興味深いエピソード満載のページです。
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お料理に欠かせないのは道具です。
よい道具を使うだけで料理の腕が上がると信じています。
特にお鍋は重要なポイントです。
ジャガイモをゆでるだけでもアルミのお鍋でゆでるのと、上等なお鍋でゆでるのでは、できあがりが違います。嘘のような話だと思われるかもしれませんが、同じ材料でも魔法をかけたように劇的に美味しくなります。
家庭料理の美味しさの決め手は、素材のよさでもなし、ましてや作り手の腕でもなし、本当は道具によるのではないかと思うくらいです。だから、私は友人達に海外旅行に出かけたら、自分自身のお土産にお鍋を買うように勧めています。そして、ぜひ、キッチン用具の専門店に行くことを勧めています。
その国にしかない珍しいキッチン用具を見つけるとわくわくするものです。それを買い求め、「さて、これを使って何を料理しようかしら?」とレシピのことをあれこれ考えるなんて素敵でしょう?
我が家の狭いキッチンには、私の気に入ったお鍋たちが出番を待っています。
ゆでる専用の鍋、トマトソースを作るための鍋、みそ汁用の鍋、ビーフシチューやカレー専用の鍋、パエリアの鍋、筑前煮のための鍋、魚の煮物専用の鍋……etc!
何を作るかで、どの鍋を使うかが決まります。
これが私の料理のこだわりなのです。
まだ若い頃の話です。アメリカのデパートで、オールクラッド(all clad)社の鍋を見つけた時、なんて美しい鍋かしら、こんな鍋でお料理したらどんなに楽しいかしら? と思いました。でも、宝石のような高価なお鍋は買えないと諦めました。
ある日、夫にオールクラッドの鍋がどんなに素敵で、それさえあれば私の料理の創作意欲がどんなに増すかを話しました。夫はその場で「じゃ〜、今から買いに行こう!」と言うのです。
「高級なバックやドレスを買っても1年に何回使うかな? 鍋は毎日使うのでしょう? だったら早く買って、今日から使うべきだ!」
納得しました。
オールクラッドの鍋を使う程に、よい鍋のもたらす料理への影響が分かってきたのです。それから私は、気に入ったお鍋を見つけるとつい買ってしまう癖がついたようです。母からは「鍋道楽」と言われます。
そんな母ヘも外国からのお土産はいつも鍋でした。赤ちゃんを運ぶように手で抱えて持って帰国しました。当然、母も鍋の魔法に取り付かれてしまったのですが…。
上等の鍋を使うことはお料理のできをよくするばかりでなく、お料理を楽しくもしてくれます。
オールクラッドの他にも私が気に入っているのはアメリカのカルファロン、フランスのルクルーゼ、ドイツのチャンタルの鍋です。
よい鍋は財産です。大事に使えば、娘にもまたその娘にも使ってもらえますしね。
宝石以上の価値があると思うのです。
今回は、オールクラッドの鍋を使って、さまざまな料理のベースとなる万能トマトソースを作ってみましょう。
万能トマトソースさえあれば鬼に金棒です。イタリア料理だけでなく色々な国の料理に使えてとても便利です。暇な時に大量に作り、冷凍保存されることをお勧めします。
夏の旬の時はぜひ、トマトを2−3日太陽に当てて完熟させてからソースを作ると、一段と甘みが増し、美味しくなります。冬はトマトのホール缶を使うことを勧めます。
◎材料
*缶詰のトマトを使う時は水を300cc加えましょう。
カナリア諸島の中にあるラスパルマスとラスパロマスって、ご存じですか?
ラスパルマスは漁港で旧市街地、ラスパロマスは高級ホテルが建ち並ぶリゾート地、
どちらものんびり休暇を過ごすには最適の場所です。
アフリカに住んでいた頃、ラスパルマスとラスパロマス、
何とも言えない素敵な響きに心惹かれて家族旅行に出かけたことがあります。
地図の上ではとてもアフリカ大陸に近いのに、この島はまさかのスペイン領なのです。
おかげで、美味しいスペインワインとスペイン料理を堪能することができました。
ラスパルマスの港の近くの小さなレストランで、
ぜひ注文したかったのは魚介が沢山入ったパエリアでした。
しかし、ここのパエリアは、とても塩が強くて、私たちの口には合いませんでした。
その後、スペイン本土に渡り、グラナダ、コルドバ、セビリア、マドリットと旅を続けていったのですが、
どこの土地にいっても、パエリアは塩辛くて期待はずれに終わりました。
それでもいつかは極上のパエリアがいただけるのではないかと、
私たちのスペイン旅行はいつしか美味しいパエリアを探す旅に変わっていきました。
ところが、とうとう最後まで私たち家族の期待に応えることのできるパエリアには
出会うことができずにスペインを後にしたのです。
「それなら自分で作ってみよう!」と、アフリカの我が家に戻るやいなや、
舌の感覚が残っている内に研究し始めました。
しかも、フライパンで簡単にできるパエリアを…。
気軽に作れなくては家庭料理とは言えませんもの!
フライパンはきっちり蓋が閉まるものでなければなりません。
また、できるだけ、厚手のものの方が焦げずにふっくら美味しくできます。
因みに私は、パエリアをつくる時はいつもアメリカ製、
オールクラッド社のステンレスのフライパンを使います。
今になって思うと、スペインは乾燥している土地柄なので塩分を多めに摂るのでしょう。
お料理と風土には、切っても切れない関係があるようです。
また、ライスがロンググレイン(インディカ米)で日本米のようにしっとりしていないので、
余計にパサパサして塩分を感じたのかもしれません。
私たちが旅行者ではなく、長くスペインに住んでいたとしたら、
あのパエリアも美味しいと感じたに違いありません。
そう思うと、もう一度、ラスパルマスの古びた漁師町のレストランでパエリアが食べたくなってきました。
◎材料(4人分)
マスタードシードって何?
何に使うの?
そんなの食べたことないな~~~!
私もインド料理に出会う前はそんなこと言っていた一人です。
普段私たちがマスタードシードを見かけるのは、フレンチマスタードの中に入っているときぐらいでしょう。
ですから、サンドイッチを作るときか、ソーセージやハムをオードブルとしていただくときにそのお供として目にするものの、マスタードシードだけをお料理に使うことはめったにないようです。
しかし、このマスタードシードをベジタブルカレーに入れると絶妙な相性のよさでカレーが瞬く間に本格的なインド仕込みのカリーに変身するのです。
味にパンチが加わり、見た目にも黒いプチプチが野菜たちのカラーハーモニーをまとめてくれるアクセントになります。
まず、鍋にオイルを入れて火にかけ、オイルが充分熱したらマスタードシードを入れます。
すると、パチパチと小気味よい音を立ててマスタードシードが踊り出します。
そこにクミンシードも加え、香りを沸き立たせ、他の香辛料と共に野菜を順番に加えていきます。相手が野菜だけに、煮込みの時間も10分~15分と短時間でカリーはでき上がります。
もちろん、ご飯にかけて食べてもおいしいですし、やさしい味なのでスープとしていただくのもよし、朝食としてトーストに浸していただくのもよろしいかと思います。
我が家のギャングたちも幼いときは、私の作るベジタブルカリーを、
「これはカレーではなくカレー味の野菜の煮込みだ!」
「自分たちはドロドロのインスタントカレーが食べたいのだから、もっと手抜きをしろ!」
なんて勝手なことを言っていましたが、最近はちょっと大人になって舌がこえてきたのでしょうか、「絶品カリー」って言ってくれるようになりました。
◎材料(5〜6人分)
◎香辛料
※実は、私がベジタブルカリーを食べたくなる理由の一つに、
カリフラワーの存在があります。
最近ではあまり見かけなくなった気がしますが、
赤ちゃんの頭のように愛らしいカリフラワーを見ると、
私はベジタブルカリーが無性に作りたくなるのです。
真っ白なカリフラワーが薄い黄色になってホクホク煮えた頃が、
このカリーのできあがりのサインです。
残念なことに今回はカリフラワーが手に入らなかったのですが、
同じような形をしていてもブロッコリーではその代役はつとめられないのです。
カリフラワーが手に入ったときはどうぞぜひ、ベジタブルカリーに加えてください。
私とインド料理の出会いは、15年前に住んでいたナイジェリアの首都ラゴスでのことでした。
なぜ、アフリカでインド料理を習ったか不思議に思われるでしょうが、文化の交流は何もその国に行かなくてもできるのです。
私はどの国に行っても、色々な国のお友達を作り、生活をエンジョイすることに決めています。
異国で日本人同士でおしゃべりして過ごすのも楽しいのですが、それよりヨーロッパ人やアメリカ人、レバノン人、インド人など国や民族の異なるお友達をたくさん作り、彼らから興味深い話を聞いてさまざまな国の文化や習慣を知り、また、私からも日本についての情報を発信するほうが好きなのかもしれません。
アフリカでもっとも過酷な生活環境の国と言われるナイジェリアに滞在していたときでさえ、私は毎日充実した日々を送り、あちこち飛び回っていました。
当時、ナイジェリアの日本人コミュニティーは小さく、駐在していた婦人は30人くらいだったと記憶しています。
せっかくアフリカに住んでいるのに、あまり現地の方々と交流せず、その国をよく知らずに帰っていく方も多かったのですが、私は彼女達にこの国に来て「こんなことやったな!」と思えることを何かして帰国してほしいと思っていました。そして、一つの提案をしました。
それはみんなで世界の家庭料理を習うことでした。
ナイジェリアには出稼ぎのレバノン人、インド人が多く、日本では食べられないような本格的なレバノン料理やインド料理がいただけました。
味もロンドン、ニューヨーク、パリなどのレストランに比べて遜色なく、しかも低価格で気軽に食べることができたので、私たちの舌はレバノン料理にも、インド料理に肥えていました。
そこで、まずはインド料理からスタートしたのです。
お料理上手なインドのご婦人に依頼し、合計10回のインド料理講習会が始まりました。
この講習会ではカレーの作り方だけではなくスパイスの効用も聞くことができ、またインドの風習や文化についても知ることができました。
そこで習ったカレーは、日本のカレーライスとは全く違っていました。
作り方はあくまでもシンプルなのですが、スパイスの使い方は複雑です。
スパイスにはそれぞれに意味があり、効用があることを知りました。
ニンニク、ショウガ、ターメリック、クーミン、コリアンダー、マスタードシード、カルガモン、シナモン、トウガラシ、コショー、ガラムマサラ……。スパイスの数の多さに当時は驚いたものです。毎日、家族の体調を考えてスパイスの種類や量も変えてカレーを作ると聞き、感心しました。
インドのカレーは医食同源の極みなのです。彼らは1年360日、1日3食、カレーを食べると言うのですが、それは私たち日本人がみそ汁を毎日食べても飽きないことに少し似ているのかと、妙に共感しました。
特に印象的だったのがマスタードシードの使い方です。マスタードシードは腸の掃除をしてくれるので、家族の誰かが便秘の時にはマスタードシードをカレーに調合すると話してくれました。また、彼らは水洗トイレが詰まったときもこれをトイレに流してつまりを解消するという、嘘のような話もしてくれました。 今回は、そのとき習ったカレーの中でも万人に愛される、チキンカレーの作り方をお教えしましょう。
◎材料(5〜6人分)
◎香辛料
◎トッピング
吉岡萬理さんの器には夢があります。
一つ一つの器に沢山の希望が込められたているようで、
見ているだけで元気になります。
その器にもっと元気の出るお料理をのせるなんて、
とてもすてきなことです。
赤い器には、やはり赤いものを…。
きっと元気が2倍になりますね。
また、赤には人を愛する情熱とそれを持続するパワーが隠されていると思うのです。
思いっきりトマトとニンニク、唐辛子を使って激辛パスタを作りましょう。
アサリは「添えもの」っといった具合に参加させます。
◎材料(2人分)
萬理さんお気に入りの四角の深皿には、
なんと言ってもグリーンピースのショートパスタでしょう?
簡単に作れるのに、抜群の栄養バランスを持ち、
万人に愛されるこの一品はぜひ、家庭の定番にしたいパスタ料理です。
萬理さん創作のキャラクター、メキシコの農夫、
カルロス君が農作業で疲れて家に戻った時こそ、
黒ビールと共にテーブルに出してあげたいですね。
そしたら、どんなに喜ぶでしょう?
このように簡単パスタは食事というより、
スナック(おやつ)みたいな感覚で食べるのがおすすめ。
すてきな器に盛り付けることによって街のビストロでいただく、
おしゃれなパスタに変身するのです。
萬理さんの器がまさしくその演出をしてくれる器なのです。
どうでしょう、パスタがなんだか浮き浮しているようでしょう?
◎材料(2人分)
貝型のパスタの中にグリーンピースが1〜2個入っている、
とてもかわいいパスタです。
レバノンに住んでいたとき、イタリアの外交官夫人で
ある親友のマリが教えてくれたパスタです。
マリは冗談で、彼女の愛娘マヤはこのパスタだけを
食べて大きくなったなんて言っていました。
それほどおいしい絶品パスタ。
おまけに美人になるのです。
グリンピースのショートパスタをぜひどうぞ!
馬喰町アートイートで吉岡萬理さんの器の中のカルロス君に
初めて会ったときの印象は、何年かぶりに弟に再会したような感じでした。
素朴で働き者で、ちょっとおっちょこちょいだけど、
気だての優しい自慢の弟です。
彼が大きな手を広げて畑の真ん中で、
にこにこしながら私を待っていてくれているようなそんな感じです。
そして、カルロス君のお皿を眺めていたら、
どうしても作りたいお料理が頭に次々、浮かんでくるのです。
「待っててよ!カルロス、お姉ちゃんがおいしいもの作ってあげるからね!」
赤いお皿には赤いパスタを、
ピンクのお皿には緑のパスタを入れましょう。
カルロスお気に入りの深めの白いお皿にはグリンピースのショートパスタ。
黒いお皿にはチリコンカンを……。
さて、サラダはどのお皿に入れましょうか?
今回はその中から2品の作り方をご紹介しましょう。
◎材料(4人分)
◎材料(4人分)
このペストは純イタリアンなのに意外に和風のテイストにも合います。
焼き海苔を細かくしたものをトッピングしていただいてもおいしいですし、
手巻き寿司のようにこのパスタをまいて食べてもおいしいです。
今回はかんぴょうを揚げたものをトッピングしてみました。
揚げたかんぴょうのパリパリ感が、パスタとのミスマッチの魅力。
味のアクセントになってくれました。
以前エチオピアに住んでいたころ、隣にイギリス人の老夫婦が住んでいて、
家族ぐるみのつき合いをしていました。
夕方の4時ごろになると、
このご夫妻は必ずアフタヌーンティーを楽しんでいました。
そして時々、垣根越しに「美穂〜、いらっしゃいよ!」と、私を誘ってくれました。
大きめのカップでいただくミルクティー、
それと一緒にいただくローレンス夫人の手作りケーキやクッキーは
一日の疲れを忘れさせてくれたものです。
また、ケーキやクッキーの横に出されていた、
彼女の作るサンドイッチはいつも私の心を釘付けにしました。
特にキュウカンバサンドイッチはシンプルなのですがとても上品で、
まるでイギリスの貴婦人のようなサンドイッチでした。
飽きのこない味で、口に運ぶときになんともリッチな気持ちにしてくれるのです。
作り方はきわめて簡単ですので、ぜひ試してみて下さい。
◎材料
イングリッシュマスタードは日本の和からしに似ていて、付けすぎると鼻にツーンときますがそれがまたよくて、サンドイッチにパンチを与えてくれます。
アメリカに住んでいたころ、我が家の子供たちに人気のサンドイッチは
何と言ってもピーナツバター・アンド・ジェリーでした。
ピーナッツバターとイチゴジャムをパンに塗るだけの
ジンプルでワイルドなサンドイッチですが、
アメリカの子供たちはこれが大好きで、ピーナッツバター・アンド・ジェリーが
ランチボックスに入っていない日はないくらいです。
私は子供の健康を考えて、
日本式のお弁当を学校に持って行かせたいと思ったのですが、
クラスのお友達と同じランチでなければ嫌だという子供たちの強い要望で、
私もピーナツバタージェリーを毎日作りました。
◎材料
日本に帰国し、息子は中学校に通うようになり、
日本式のお弁当を持っていくようになりました。
でも、しばらくすると、突然「ママ、久しぶりにピーナツバター
・アンド・ジェリーをランチに持っていきたいな!」と言うのです。
お安い御用です。
すぐに作って持たせてあげました。学校から帰ってきた息子が悲しそうに、
「学校に行く道で、友達にアメリカのピーナッツバター・アンド・ジェリーが
どんなに美味しいか話したら、1時間目が始まる前に僕のランチは消えていた。
誰かに食べられたぁ〜!」
◆サプライズサンドは楽しいサンドイッチです。
パンの蓋を開けるとその中にきれいに並んだ
美味しそうなサンドイッチが入っています。
蓋を開けて驚き、食べてその美味しさに驚くのです。
ピーナッツバター・アンド/・ジェリーも入れます。
ピクニックに行くときに、ぜひ持って行きたいサンドイッチです。
どうやってパンを切り抜くかって?
その方法には秘密があります。
ヒントはパンの側面に一カ所だけ、パン切りナイフを刺した穴が開くこと。
どうぞ、チャレンジしてみてください。
うまくいったら、誰でも最高にサプライズすると思いますよ!!!
イギリスにはあまり美味しいものはないと言われますが、スープだけは別のようです。特にリークスープはおすすめです。
どんよりしたロンドンの冬、その町の片隅にある小さなパブ。
本を片手にひとりゆっくり楽しむ少し遅めの昼食。
硬くなったパンを千切って浸していただくスープ。
そんな光景を想像するだけで幸せな気分になります。
それがリークスープだったら、もっとステキな気分になれそうです。
イギリスの食事を私の中で分析した結果、味は単調で万人にとって美味とは言えなくても、素材を大事にした単品料理だという結論になりました。
肉は肉のまま、野菜は野菜、豆は豆、それそれの食材が自分達の存在を主張できるように調理されていて、英国人はそのシンプルさを食事の定義としているようにも思えます。
いろいろな食材を混ぜることは彼らにとって家畜の餌のようなものなのでしょうか?
日本料理も本来、食材の特徴を生かしたシンプルな料理であり、それを贅沢と言っていました。
どうも、最近の日本料理の傾向は色々な食材を混ぜすぎているように思えて残念です。
私はさいたま市に住んでいて、近くには広大な見沼田んぼがあります。この町に住んでよかったと思うことのひとつは、地元で採れた新鮮な野菜が一年中いただけることです。野菜を通して季節を感じることができるなんてステキでしょう?
春が近いこの時期、私の目を釘付けにするのが「土ねぎ」です。
すりこぎのような胴体に白い髭をはやし、泥をいっぱいつけた土ねぎ。これを見かけるとリークスープが作りたくなります。
リークと土ねぎは味が微妙に違うので本来のリークスープと同じできばえとはいきませんが、それにちかい味は出せます。
深谷ネギ、下仁田ネギ等、ねぎの種類も豊富にあるようですが、「土ねぎ」は肉厚で繊維が多く、スープにしてもコクや味が損なわれません。「土ねぎ」はリークにもっとも近いねぎだと思うのです。大きな土ねぎを見かけたら、ぜひ、リークスープを作ってみてください。もちろん、デパートなどで本物のリークを見かけたら、ぜひそれを使って本場の味を楽しんでください。
このごろは野菜に季節感がなくなり、一年中あらゆる種類の野菜をいただけるようになりました。寒い冬でも、レタスやきゅうり、トマトなどの入った野菜サラダがバリバリ食べられるようになったことは喜ばしいことです。でも、ちょっと昔の人々のことを考えてみましょう。雪の降る、凍てつく大地に、サラダ用の野菜は栽培できたのでしょうか?
私のチェコの友人、エヴァは、冬には根菜中心のスープで野菜を摂取し、夏場はサラダにして野菜を食べると言います。その理由は、スープは体を温め、サラダは体を冷やすからです。彼女は健康のことを考えてそのルールを守っているそうです。
寒い冬に欠かせない温かいスープは、体だけではなく心も温めてくれます。
そして、体を丈夫にします。
また、スープには愛を感じます。
風邪をひいた子供にチキンスープを飲ませるアメリカの母の愛情。
毎朝、コトコトいう鍋の音とともに味噌汁を仕上げる日本の母の愛情。
野菜嫌いの子供のために細かく切った野菜のスープを作るのは、万国共通の母の愛情。
スープの数だけ愛情があるようにも思います。
レバノンにも母の愛情がいっぱい入ったおいしいスープがあります。
レンズ豆とほうれん草に似た青菜をたっぷり入れたスープ、Shorbet Adass Bil-Hamodです。
お腹に優しいベジタリアンスープで、仕上げにヨーグルトを入れて味を整えるのですが、一口飲むと驚くほど濃厚でクリーミーな味わいが口に広がります。
このスープは日本では唯一、馬喰町ART+EATで頂くことができますので、ぜひ、足を運んで心と体を温めてください。
もうひとつ、我が家の冬の定番にミネストローネスープがあります。
ミネストローネはトマトの赤が見た目にも温かく、心をほっとさせてくれます。
何種類もの野菜がそれぞれの味を主張しながらも調和してハーモニーを奏で、ゆっくりじっくり体を温めながら、幸せな気持ちにしてくれます。
◎材料(6〜8人分)
*サーブのときのトッピング(好みによって)
イタリア人の友達に、本格的ミネストローネの作り方を聞きましたが、ベーコンは使わず、牛肉のこま切れみたいな肉を使うそうです。
また、彼女はキドニービーン(金時)とボットリービーン(白インゲン)のどちらかを必ず入れるそうです。また、キャベツは入れないそうです。
よい鍋は、料理に命を吹き込むと私は信じています。だから、私はスープを作るときはスープ専用の深鍋を使います。
我が家のスープ鍋はドイツ製のチャンタル(chantal)ホウロウ鍋です。
たっぷり作って2~3日間、このスープを楽しみます。
スープにはやはりそのスープに合う添え物が必要です。それがあるだけでそのスープはひとつ上のランクに生まれ変わるのです。
ミネストローネにはやはりブレッドスティックがよく合います。
でも、一からブレッドスティックを作るのは大変!
だから私は市販のバゲットを長く細く切って作ります。
◎材料
以上の材料を合わせ、細長く切ったパンに刷毛で塗り、オーブントースターで5分間焼きます。簡単にできて楽しい形、これをスプーン代わりにスープをいただく。
子供たちにはとっても好評ですよ。
私は以前から、レバノン料理は美容と健康によいとみなさんに申しあげてきました。
なぜそう言い切れるかというと、美容に関してはレバノンの女性の肌がそれを証明しているからです。
あの乾燥した気候、太陽の日差しをいっぱいに受ける生活習慣、なのになぜかレバノンではどの女性もお肌がつるつるでシミひとつないのに驚かされます。
その秘密は食生活に隠されているのではないかと私は思うのです。
レバノン料理の基本的な食材であるオリーブオイル、ヨーグルト、ナッツ、大麦や豆類はどれも美容によいものばかりですが、さらに、彼らは信じられないほど大量の野菜、特にパセリをたくさん食べます。
これでお肌がつるつるにならないはずがないでしょう。
馬喰町ART+EATがオープンしてはや一年。この一年間レバノン料理を食べ続けてきたスタッフはみるみる美しくなって(???)、私の見解が間違っていなかったことを実証してくれました。
嘘だとお思いなら、彼女たちのお肌のはりをご覧になりに、ぜひ馬喰町ART+EATに足を運ばれてはいかがでしょう。ついでにきっとレバノン料理が好きになると思います。
小川先生のこと
小川先生は、世界各国で生活した体験を生かして、
日本中近東アフリカ婦人会のメンバーとして国際交流のための活動をする傍ら、
馬喰町ART+EATのフードプロデューサーとして活躍されています。