馬喰町ART+EATのランチのレシピを作っている料理研究家・小川美穂が綴る「世界の食をめぐる」楽しいエッセー。実際に滞在したアフリカや中近東の国々のおいしい家庭料理の作り方や、「食」をキーワードにして観たそれぞれのお国柄、興味深いエピソード満載のページです。
小川先生も活躍している中近東アフリカ婦人会から発行されている人気料理本『アフリカン&アラブクッキング』は馬喰町ART+EATで常時ご購入頂けます。
中近東アフリカ婦人会
http://www.yamaboshi.com/africa/

イギリス人はスコッチをこよなく愛し、ビールを飲む人々をさげすんだ時代もあったという話を聞いたことがあります。
でも、知り合いのイギリスの外交官はビールが大好きで、よくカクテルパーティーの席で大瓶のビールをラッパ飲みしていました。その姿を見た時は、そんな話は昔話か作り話だったと確信しました。
ビールは万人に愛されるアルコールとして市民権を勝ち取っているのです。
そして、世界にはなんとたくさんのビールのブランドがあり、どの国、どの地方にも、その土地の気候や風土にあったビールが造り出されています。
ビールのブランドや無限大です。だとすればビールに合うお料理も無限大なはずです。
レバノンにはアザールという美味しいビールがあります。
アラブの国で生まれ育ってきたビールが遠く旅して、馬喰町ART+EATでも飲めるのですから、なんだかステキです。これはぜひ飲みにくるしかありませんね。
アザールは、アラブの中にあって唯一アルコールが楽しめる国、レバノンのビールなのです。アラブ人に愛されたビールです。
レバノンにはアラブの諸国から多くの旅行客がアルコールを飲みにやってきます。アザールを飲んだ人々は、どんなに心を癒されるかわかりません。
乾いた土地で飲むビールは咽を潤し、ビールとともに頂くレバノン料理、特に前菜であるメッセの味を一段と美味しくすることは言うまでもありません。
メッセの中でも、ファタイヤは本当にビールに合うと私は思っています。
ファタイヤは、日本で言うお焼きのようなものです。
前回もファタイヤについて触れましたが、ファタイヤには色々な種類があり、家庭によって形も中身も作り方も違うのです。
ファタイヤは、太古の昔から航海貿易で栄えたフェニキア人の末裔であるレバノン人によって、郷里の味、家庭の味、母の味として重宝され、今日に引き継がれてきたのではないでしょうか。
また、ファタイヤは、ミンチした羊の肉などを入れることによりミートパイとなります。そんな風に少しずつ変化しながら、西洋の国々に進出して行ったのではないかと想像するのです。
しかし、レバノンでは、ファタイヤはあくまでもメッセの一品であり、ベジタリアンの前菜として楽しむことが多いようです。
◎材料(10個分)
以前、住んでいたアメリカのポートランドでは地ビール工場があちらこちらにあり、また、その工場の中では独自な味のビールを造っていました。例えばハーブの香りのビールやレモン味のビール、あるいは自家製ギネスビール等々、それが美味しいかどうかは別にして、このようなビール工場には、必ずといっていいほどレストランが隣接され、出来たてのビールが頂けました。
そこで、新鮮なビールとともにビールの味を引き立てる料理を食べるのは最高に幸せな一時でした。
私達が友人たちとよく連れだって行っていたビール工場のレストランではビアーソーセージが一番人気。ビアーソーセージとはそこのビールとよく合う選ばれたソーセージだけに与えられる呼び名で、ビールが入ったソーセージではないことを後で知りました。
このように地ビールに合うその土地のお料理が絶対あるはずですが、それがレバノンではレバノン式おやき、ファタイヤだと私は思うのです。
同じように思いを巡らせればナイジェリアでは、イコイクラブのスーヤ(牛肉の串焼き)であり、
ニューオリンズではクローフィシュ(ざるがに)の塩ゆであり、
インドではクミンの実が舌に刺さる激辛のサモサであり、、、、、
メキシコでは???
香港では???
エチオピアでは???
と、考えているとなんて楽しいのでしょう。
考えているだけで心地よくほろ酔い気分になりました。
小川先生のこと
小川先生は、世界各国で生活した体験を生かして、
日本中近東アフリカ婦人会のメンバーとして国際交流のための活動をする傍ら、
馬喰町ART+EATのフードプロデューサーとして活躍されています。